• 講師歴15年以上の現場講師が感じる“2024年度卒 新入社員の傾向と育成のポイント” Vol.1
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講師歴15年以上の現場講師が感じる“2024年度卒 新入社員の傾向と育成のポイント” Vol.1

2024年度 新入社員研修

2024年度卒の新入社員は、変化への順応に前向きに奮闘している

2024年度卒の彼らは、学生時代の前半をオンライン、後半を対面で過ごした世代です。就活はオンラインと対面の両方を体験した人も多いようです。オンラインと対面の両方の学生時代を体験した彼らは、双方のメリット・デメリットを実感しています。現在多くの企業がテレワークから対面の仕事に戻り、職場では対面でのコミュニケーションが求められるようになりました。

弊社の2024年度の新入社員研修も、前年まで主流だったオンライン研修から、ほとんどが対面研修に切り替わりました。研修会場に来られる受講者様は、対面でのやりとりにまだとまどいがある人、逆に率先して周囲と関係性を築いていく人など様々です。

今回は、そんな様々なタイプの方がいらっしゃる今年度の新卒新入社員の傾向と育成のポイントを、2回にわたり現場の講師目線でお伝えします。

講師から見る今年度の新入社員の特徴は、「素直で真剣」「タイパ重視」「何でも質問する」「受容力が高い」。

1.素直で真剣

言われたことはとにかく素直に一生懸命に取り組みます。趣旨を理解して取り組み、出来ないことは質問や確認をし、出来るようになる努力をします。特に準備をする時間があると、複雑なテーマでも自分の考えを上手くまとめ、簡潔に発表をすることができます。

指示や依頼は具体的に伝えれば伝えるほどのみ込みが早く、ワークへのとりかかりも早いです。反面、準備の時間なく講師が指名をして、「ちょっと、やってみてください」とあてたものは、簡単なものでも緊張して詰まってしまいます。キーワードだけを渡して「あとは自分達で考えてみて」という指示も、何をするべきかを整理するのに時間がかかり、とりかかりまでに時間がかかります。ある程度の“お膳立て”と“安心して取り組める環境”が必要で、自身でも環境作りに注力します。

また、自宅でのオンライン授業に慣れている彼らは、時折“油断”をします。講義形式の場では講師からは見られていないと思い、堂々と大あくびをしたり、背伸びをしたりする姿も一部に見られました。真剣ではあるものの、“いつどこで見られているかわからない”という緊張感はあまり無いように感じます。

そんな彼らへの育成方法のポイントは…

  1. ①指示や依頼は具体的に出す

    育成側が求める具体的な結果や手順を伝えます。「書類がそろったら総務の〇〇さんに持っていく」「議事録は箇条書きにしてA4用紙1枚にまとめる」「残りが3分の1になったら補充する」「商談はダイレクトに用件に入らず、〇〇についての近況伺いなどを先にする」などです。また、完了報告をさせる際にもこちらからも指示通りにやったかどうか具体的に質問をします。

  2. ②準備する時間を渡す

    考えさせる仕事を依頼する際には、余裕のある納期設定をします。考える際のステップやコツもあわせて伝えると安心します。「うまくいかなければ、考えたところまでを伝えにくるように」という声かけも有効です。

  3. ③安心して過ごせる環境を提供する

    わからないことが出てきたら誰を頼ればよいかがはっきりしていると安心します。また同期同士でコミュニケーションをとる機会や、個別面談をする機会も多めにあるとよいです。「何かあれば言ってきてね」よりも、先輩・上司・育成担当者から「話をしようか」と声をかけて機会を作っていくとよいです。

    また相談されたことに対してはスピードをもってフィードバックすることも重要です。「聞いていた話と違う」「思っていた状況と違う」というたぐいの話が出てきたときには特にスピーディな対応が必要です。“何かが違う”と感じ始めてから退職までのスピードが速いのも今年度の特徴です。

    また、時代の流れもありハラスメントには敏感に反応します。自身に対しても周囲に対しても、ハラスメントが起きない環境であることも彼らにとっては重要です。ただし、“安心できる場”と“緊張感のない場”は違います。あくまでも仕事の場であることは意識させ、最低限のビジネスマナーは実践できるよう指導していくことが必要です。

2.タイパ重視(効率を優先し、判断・行動をする)

グループワークでは冒頭から“Aについて話し合う人”、“Bについて話し合う人”、“模造紙に書 く作業をする人”という完全分業でワークを進行させるチームが見られました。講師の指示は、「Aで個人の意見を共有し、共有結果を踏まえてBを全員で討議する、その結果を模造紙に書く」というものでしたが、全体の流れやステップを踏む意味を考える前に、“納期内に終わらせるために効率的な段取りを組むこと”に意識が向き進んでいるようでした。

進行途中で講師が、「全員で合意をとって進めていますか」と尋ねると、「個人の意見を書いたテキストを担当している人に渡しています」「耳だけは会話を聞いているから大丈夫です」と答え、自分達がしていることが討議になっていないことに気がつけていません。

“納期を守り終わらせること”(研修では納期は厳守と習ったし…)が目的になり、ワークの本質をつかみきれないまま目の前の作業をする、その結果、成果物が表面的で深みのないものに仕上がり、どうも他のチームと出来上がりが違う…。そんなチームがいくつかありました。

また、“基本の練習を何度もさせられる”、“状況を想像し、正解を自分で考えてみる”などもタイパが悪いととらえています。研修中も実践練習には取り組みますが、照れがありふざけてしまったり、“1度出来たからもういいよね”とやめてしまったりという方も見られました。

「正解があるなら、わざわざ考えるよりも教えてもらったほうが効率が良い」「応用編やイレギュラー対応も先にすべて知っておきたい」「失敗事例なども聞いておいて、やらないようにしたい」など、“自分で考える、チャレンジする、失敗から学ぶ”という行為に対して意味や価値をあまり感じない人が多いのも今年の傾向です。

そんな彼らへの育成方法のポイントは…

  1. ①仕事の目的を伝える

    「早く終わらせる方法や段取りを考え実践する」ことも仕事を進めるうえで良いことです。その部分も評価しつつも、その仕事の目的が何であるのか、どのような結果を求めているのか、次にどこにつながっていくのか、お客様がどのような思いを持っているのか、どこが評価されるのかなど、指示を受けた人が目的をはき違えないように説明をしっかりとすることが必要です。

  2. ②本人に復唱させる

    伝えた事をきちんと本人が理解しているかを、本人の言葉で復唱させます。

  3. ③手本を見せる

    話して伝えるだけではなく、やって見せる、やらせてみせます。実践の場面を想定した練習が有効です。基本を教えたら出来ているかどうかをチェックし、できたらすみやかに次に進む。基本の繰り返しではなく、少しずつでも進んでいると実感できる練習が、モチベーション維持につながり効果的です。

講師

Hitomi

名前: 大隈 多恵(おおくま たえ)

株式会社アソウ・ヒューマニーセンター
教育事業部 専任講師

教育事業部に配属以来、社内外の企業人材、登録スタッフなどを対象に、15年以上に渡り育成する側、される側のニーズにあわせた多種多様な研修を行ってきた。心理カウンセラー、メンタルヘルスマネジメントの資格も持ち、“誰ひとり取り残さない人材育成”をモットーに、内面的にも働く人のサポートを行う。

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